蟻通薪能(第四回)20170918

 そんな高尚な趣味を持っているわけではないけれど、文学少女の母と一緒にいろんな世界を観たくて、「薪能」を観覧した。凄い迫力。その一言に尽きる。

 独鼓:蟻通

 狂言:膏薬ねり

 能 :紅葉狩

「能」については、私の奈良時代奈良教育大学図書館勤務当時、能楽師 金春穂高氏による公開セミナーで学んだ。といってもその後、実際に「能」を観たこともなく、何かの折りに病院図書館員仲間のそのまた友人が金春家ゆかりの人に嫁いだ、等と聴いて、驚いた記憶があるくらい。

 それが、今年の春、母に見せてもらった「ありとほし薪能」のチラシに興味津々で、母子ふたりで観に行くことにした。それもあって今年8月8日に放送されたNHK「京都異界中継」で、能楽師 大槻文蔵氏による能「鉄輪(かなわ)」を興味深く観た。なぜ件の番組を知ったのかというと、これも私の奈良時代に楽しんだ奈良落語の笑福亭純瓶の公式アメブロから。

 能観覧には、長女も来る筈だったのだが、仕事と育児の都合もあって早々に不参加表明。せっかくの貴重なチケットを無駄にしてはいけないと、母が20年来習っている太極拳の師匠をご招待した。

 実はこの方、私の小中高の同級生で家も近所で登下校を一緒にした仲。大阪教育大卒の才媛でいながら、卒後(彼女によると諸事情によって)直ぐに結婚し専業主婦になってしまった。「なってしまった」と、私がネガティブな言い方をするのも、彼女のたぐいまれなユニークさを家の中に埋もれさせ社会に還元・貢献させなきゃそれこそもったいないと、常々思っているから。無論、今では太極拳の世界で活躍している訳だから、意に沿わない就職戦線で試行錯誤して人生を無駄にするよりは良かったのかもしれない。

 大学卒後38年ぶりに大学の同窓会に行って来たのだという。就職した人がそろそろ退職を迎える頃なので、会おうということになったのだという。私たち還暦だもの、節目だよね。

 私の方はというと、先日ようやく借金蟻地獄を脱出したもののまだまだ働き蟻であり続けなくては食べていけないのが現状だから、「同窓会」を楽しめる心のゆとりは皆無。そんな身の上話を聴いてもらっても返答に窮するだろうなあ、そんな事を思いながら、彼女の話を聴いていた。