そうか、歳をとったのか

母校の文化祭…

まあ、わざわざ同窓会が葉書をくれたのだし

ここで逃すのも惜しいので、何とか行く事にした。

門を通る…

…最後にこの門を通ったのが妹の文化祭だから

17年ぶりになる。つまり今の高校二年生が生まれた頃が

最後に…なる。

来賓名簿に記入する。同窓生の枠に名前を書く。

同期の人の名前が書いてあるが今一思い出せない。

多分相手が私の名前を見てもそう思うだろう。

恥ずかしいので、足早に校舎へ向かう。

親子連れの近隣の人々、或いは保護者、そして現役生。

現役生の友達の他校の人々、もしかしたら同窓生の夫婦。

そんな中にいる独身アラフォー男は…まあ苦しい。

校舎は土足で入れた。というより学校自体が一足制になっていた。

あの便所サンダルを今の生徒は履いていないのだ。

下駄箱がないので何となく違和感を覚える。

コモンスペース周りの構造がちょっと思い出と異なる。

真っ直ぐ会場の体育館へ行く、そして入る。

入学式と、卒業式に使う体育館。

ここから高校生活が始まって、ここで終わる場所。

今から23年前にここへ足を踏み入れて…

いろいろ感慨が沸くはずなのだが、いや、沸くと思って

それを期待して今回行ったのだが…沸かない。

ちらりと目の前に忘れられない人々が当時のままに

幻覚として現れてくれないかと思うが、ファンタジーの

ようには出てくれない。

板敷きの上にシートをかけている体育館はまさに

卒業式入学式仕様そのものだが、何も出てこない。

唯一「おっ」と思ったのは回転式の色ガラスで

カラフルな光線を出すライトが現役のまま

二階のベランダにおいてあった事だ。

ああ…あれは。あれを動かしていたのは…

同窓会の演目が始まる。

合唱部OBと助っ人の計10人による演唄である。

ちなみに観客は40人ほど。殆どの人の顔を知らない。

同級生だとしたら面影すら無いな、と思ったらどうやら

私より10年先輩の6期生がほぼ全員らしかった。

合唱部の歌はとても10人で出しているものとは思えない。

質が高く、ハッキリ言って観客の数がもったいない。

100人いてもいいだろう。

そうこうしているうちに、校歌となった。

「どうぞ壇上に上がってください!」と司会の人が言う。

しかし…これは苦しい。それまで聞いていた合唱部OBは

さすがに音程は完璧だし、声も通る。そこへ割り込むのは…

結局女性は十数人上がったが、男性は皆無だった。

そう、この校歌は男性にはつらい。音程が狂いやすく、

狂わなくても声として気の抜けたようになる部分がある。

私は現役のときにテナーだったが特に気の抜けた部分が目立つ。

…今から思うと、狂おうが間抜けだろうがでかい声で歌ってりゃ

よかったと思うから後悔先たたずである。

校歌が終わって。同窓会の演目は全て終了。

数十分後には現役生の軽音有志発表らしい。

「それは現役生の祭典さ」と思った私は…私だけではなく

全員が体育館を後にした。

その後…どうやら同窓会交流会が教室の一角で

開かれるらしかった。ほぼ全員が6期生の中で私は

16期生である。場違い…というよりは恥ずかしさで

参加せず、よくよく考えれば大変失礼な事に6期生を含めた

同窓生に一言も声をかけずにスタスタと学校を出た。

…もっと、何か感慨がわくと思っていた。

上手くない例えだが、自分の死体を見るような

そんな感慨がわくものだと思っていた。

それはとても残念だ。だが、単純に私は歳をとって

しまったのだろう。